学校と家庭で使う伝え方は、「場面」「本人がしたこと」「周りがしたこと」「次に確かめること」の四欄へまとめます。同じ身ぶりに一つの意味を付けず、どこで何が起きたかを一枚で見られるようにします。

学校と家庭でまったく同じ方法を使うことが目的ではありません。人や場所が変われば、本人の伝え方も変わることがあります。一枚は評価表ではなく、見えた場面を持ち寄るための共有メモです。

まず一つの場面を選ぶ

最初に、毎日繰り返す場面を一つ選びます。朝の支度、休み時間、帰宅後などです。

困っている場面だけを選びません。本人が選べた時や、周りへ伝わった時も対象にします。

一枚へ複数の場面を詰め込むと、どの手がかりが使われたか分かりにくくなります。最初の一週間は、一つの場面だけを見ます。

学校へ依頼する時は、記録を増やすことが負担にならないかを確認します。既存の連絡帳で共有できる場合は、新しい用紙を増やしません。

本人がしたことを先に書く

本人がしたことは、見えた順に短く書きます。「写真を指した」「ドアの前で止まった」のような動きです。

「嫌だった」「分かっていない」といった解釈は、この欄へ書きません。表情や声を残す場合も、見えたことと家族の受け取り方を分けます。

場面本人がしたこと周りがしたこと次に確かめること
朝の支度かばんの写真を指した次の靴の写真を置いた二枚同時でも選ぶか
帰宅後玄関で座った家族が少し待った休む場所を示すか

声やことばだけを伝え方と考えません。視線や身体の向きも対象です。物を渡す動きも、場面と一緒に残せます。

周りがしたことを別の欄へ置く

本人の動きのあとに、家族や先生がしたことを書きます。写真を見せた、少し待ったといった具体的な関わりです。

本人ができた理由を、周りの支援だけに結び付けません。同じ関わりでも、日や場所によって様子が違うことがあります。

「声かけでできた」ではなく、使った言葉と待った時間を書きます。正確な秒数を測る必要はなく、すぐ返したか少し待ったかを分けます。

学校と家庭で関わり方が違う場合も、どちらかへ統一する前に並べます。本人が使い分けている可能性も含め、次に見る場面を決めます。

写真やカードは現物を増やしすぎない

学校で使う写真やカードを家庭でも試す時は、最初に一枚だけ共有します。画像データを受け取る方法は、学校の個人情報ルールを確認します。

本人やほかの児童が写る写真を、家庭用メモへ不用意に複製しません。物や場所だけを写した画像でも、学校の案内に従います。

家庭で作ったカードを学校へ渡す場合は、使っている場面と置き場所を添えます。カードだけを渡し、同じ反応を期待しません。

使わなかったカードも失敗としません。どの場面で見せたかを書き、続けるかを学校と相談します。

意味を一つへ固定しない

本人が同じ動きをしても、場面によって伝えたいことが違う場合があります。ドアへ向く動きが、外へ行きたい時と音から離れたい時の両方に見えることもあります。

一枚には「この動きは必ずこの意味」と書きません。「家では外出前に見ることが多い」のように条件を添えます。

家族には分かる動きでも、初めて関わる人には別の受け取り方があります。答えを教える紙ではなく、本人へ確かめる入口として渡します。

こども家庭庁の児童発達支援ガイドラインは、こどもの意思を尊重し、意思の表出や選択を支えることを示しています。周りが意味を決める前に、本人が示した場面と選べる方法を見ます。

学校から家庭へ一つだけ持ち帰る

学校から共有してもらう時は、毎日の詳しい記録を求めません。「今日、本人から始めた伝え方が一つあれば教えてください」のように範囲を絞ります。

何も共有がない日は、伝え方がなかった日とは限りません。学校の一日の中で記録できなかった場合もあります。

家庭では、持ち帰った場面と似た状況があるかを見ます。同じ方法をすぐ再現させず、本人が選ぶ物や向かう場所を確かめます。

学校での記録を家庭の判断で書き換えません。分からない部分は、次に質問する欄へ置きます。

一週間で一枚を更新する

一枚の右上に更新日を書きます。毎日作り直さず、一週間を目安に見直します。

新しく見えた伝え方があっても、欄を増やし続けません。今の場面でよく使う物を残し、別の場面は次の一枚へ移します。

以前の方法を使わなくなった場合は、消して終わりにしません。最後に見た日を添え、必要なら過去の紙として保管します。

文部科学省の教育支援の手引は、本人の教育的ニーズを整理し、関係者が共通理解を図る考え方を示しています。一枚は本人を一つの説明へ固定せず、学校と家庭が同じ場面から話すために使います。

次の一週間で見る場面を決める

今日することは、学校と家庭で共通して起きる場面を一つ選ぶことです。四つの欄を書き、分からない所は空けます。

学校へ渡す前に、本人や他の人を特定する情報が必要以上に含まれていないかを見ます。学校の正式な個別の指導計画や支援計画を、家庭の一枚で置き換えません。

伝え方を共有する目的は、本人の反応をそろえることではありません。本人が今使っている方法を、周りが急がず受け取ることです。一つの場面から始めると、その違いを具体的に話せます。

参考にした公的資料

この記事では、文部科学省「障害のある子供の教育支援の手引」を確認しました。教育的ニーズの整理と関係者の共通理解に関する考え方を参考にしています。こども家庭庁「児童発達支援ガイドライン」の意思表出と選択に関する記載も参照しました。いずれも2026年7月25日に確認しています。