進級前の記録は、本人ができることの一覧ではなく、一日の流れを場面ごとに残します。朝と授業の間、休み時間と帰宅に分けます。本人がしていることと、周りが使う手がかりも分けます。
次の学年でも同じ支援を続けるよう求める紙ではありません。今の担任や家族が見た場面を、新しい環境で確かめる入口にします。正式な引き継ぎ資料や個別の教育支援計画を、家庭の一枚で置き換えません。
一日を四つの場面に分ける
最初に、一日を朝と授業の間へ分けます。休み時間と帰宅も別にします。教科ごとの詳しい記録は作りません。
本人が毎日していることを、各場面に一つずつ書きます。「教室の前で予定を見る」「帰宅後にかばんを置く」などです。
見えなかった場面は空欄にします。想像で埋めず、学校へ一つ尋ねます。
| 場面 | 本人がしていること | 周りの手がかり | 次に確かめること |
|---|---|---|---|
| 朝 | 教室前で予定を見る | 先生が最初の写真を示す | 教室変更時の場所 |
| 休み時間 | 窓側の席へ向かう | 終わりに次の写真を置く | 新しい教室でも選べるか |
できることを能力の一覧にしない
「一人でできる」「できない」の二つに分けません。どの場所で、何があると動いているかを書きます。
本人が自分から始めた日も、周りが合図した日もあります。どちらかを完成した状態とせず、両方の場面を残します。
手伝いの量を点数にしません。声や写真、物の置き方などを書きます。使われた手がかりを具体的に残します。
進級後に同じ動きが見えない場合も、以前できたことが失われたと決めません。教室や人、時間割が変わった条件を先に見ます。
本人が選んでいる場面を入れる
一枚には、本人が選んでいることを一つ以上入れます。休み時間の場所や、支度で先に手に取る物などです。
家族や先生が選んだ予定と、本人が示した選択を分けます。本人の表情だけで希望を決めず、向かった場所や手に取った物を残します。
本人へ進級について尋ねる場合は、新しい学年の説明を理解できるか試しません。教室や先生の写真など、確かめられる一つを見せます。
こども家庭庁の障害児支援におけるこどもの意思の尊重に関する手引きは、こどもの意思を丁寧に把握する考え方を示しています。進級記録にも、大人が必要とする支援だけでなく本人が選ぶ場面を置きます。
今の担任へ一場面ずつ確かめる
家庭では見えない授業の間や休み時間は、担任へ一つずつ尋ねます。すべての教科の記録を依頼しません。
「普段できていますか」ではなく、「教室を移る前にどの合図を見ていますか」と聞きます。見えた事実を答えやすくします。
先生の返答と家族の受け取り方を、別の欄へ書きます。分からない部分は「未確認」と残します。
今の担任が大切にしている関わりも聞きます。ただし、進級後に同じ方法を必ず使う約束として書きません。
家庭の朝と帰宅後を添える
学校の一日だけでなく、家庭の朝と帰宅後も一場面ずつ入れます。登校前の順番と、帰宅後に最初に向かう場所です。
進級で時間割や下校時刻が変わると、家庭の流れも変わる場合があります。今の流れを基準にし、変わる所を次に確かめます。
家族が手伝っていることも書きます。本人ができないことの一覧ではなく、朝をつなぐ周りの役割として残します。
個人情報や健康情報を含む内容は、学校の正式な共有方法を使います。一枚には資料の所在だけを書けます。
新しい担任へ三つだけ渡す
一枚をそのまま全部渡す前に、最初に知ってほしい三つへ印を付けます。本人が選ぶ場面、移動の手がかり、家庭との連絡などです。
進級初日にすべてを再現してもらう必要はありません。新しい教室で確かめたいこととして渡します。
説明する時は「これが正しい方法です」と言いません。「今の学年では、この場面で見ています」と条件を添えます。
文部科学省の教育支援の手引きは、教育的ニーズを整理し、関係者間で共通理解を図りながら継続的に支援を考えることを示しています。家庭の一枚も、現在地を次の対話へつなぐ資料にします。
進級後に同じ一枚へ追記しない
進級後は、古い一枚をそのまま更新し続けません。新しい場面を別の紙へ残し、前の学年と並べます。
同じ手がかりが使われていれば、続いている場面として書きます。違う方法が見えたら、どちらが優れているかを比べません。
本人が新しい場所を選んだ場合は、その選択を先に残します。以前の流れへ戻す前に、今の環境で続けられるかを見ます。
一か月ほど経ったら、最初の三つを学校と見直します。不要になった情報は外し、新しく必要な確認を一つ加えます。
今日の一場面から書く
今日することは、朝の教室へ入る場面を一つ書くことです。本人がしたことと、周りがしたことを分けます。
次に休み時間と帰宅を一つずつ足します。空欄は学校や本人へ確かめる問いにします。
進級前に残す目的は、本人の成長を証明することではありません。今の一日を、次に関わる人が同じ場面から見られるようにすることです。四つの流れがあると、変わる所と続けたい所を具体的に話せます。
参考にした公的資料
この記事では、文部科学省「障害のある子供の教育支援の手引」を確認しました。教育的ニーズの整理と関係者の共通理解、継続的な支援の考え方を参考にしています。こども家庭庁「障害児支援におけるこどもの意思の尊重・最善の利益の優先考慮の手引き」も参照しました。いずれも2026年7月25日に確認しています。